阿浦の山奥にひそやかに佇む稲荷神社を訪れた大学生の健は 赤い鳥居が連なる参道を歩いていた 桜の花びらが舞う中 キツネの石像が見守る神社は静寂に包まれていたが どこか不気味な気配が漂っていた
鳥居には大きな注連縄が掛っていた 眺めていると 突然、背後から低い唸り声が聞こえた
振り返ると 一匹のキツネが見つめていた 赤い首輪をつけたそのキツネは 導くように参道の奥へと歩き始めた
キツネを追った 鳥居をくぐり抜け 奥へ進むにつれて霧が濃くなる
やがて キツネは小さな祠の前で立ち止まり 姿を消した
祠の前に置かれた古びた木箱に目をやると そこには「開けるな」と書かれた紙が貼られていた しかし 蓋を開けてしまった
中には古い手紙が入っており 「この神社に隠された真実を知る者は 永遠にここから出られない」と
その瞬間 背後で鳥居が軋む音が響き 霧がさらに濃くなった
振り返ると 来たはずの参道が消え キツネの石像が不気味に笑っていた
そして穏やかな声が聞こえた「この神社は お前が忘れてしまった大切な記憶を守る場所だ」
失われたと思っていた過去の記憶がいくつか蘇ってくるのを憶えた
現実世界に戻った健は 以前よりも豊かな心で日々を過ごすようになった
デジタル世界の中に 真の心の豊かさを見出した 過去と未来 現実と仮想空間が交錯する中で 新たな自分を見つけ出し
バーチャルな空間であっても 真の出会いや気づきが生まれうることに気づいたのだ
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